2022年3月22日 –新興アジア諸国の経済活動は2022年も引き続き回復に向かいますが、重要な不確実性とリスクも依然として存在します。そのため、本日発表された『東南アジア、中国、インド・エコノミック・アウトルック2022:新型コロナウイルスからの持続可能な回復を支えるファイナンス(the Economic Outlook for Southeast Asia, China and India 2022: Financing Sustainable Recovery from COVID-19)』によると、同地域の政策立案者は持続可能な回復を確実なものにするために、資本市場や資本調達手段をさらに深化させるなど、ファイナンスの選択肢を広げる必要があります。
ロシアによるウクライナへの大規模な侵略が始まって以来見られる商品価格や金融市場の動きは、新興アジア諸国(ASEAN10カ国、中国及びインド)の回復を遅らせる可能性がありますが、全体としての影響はOECD諸国よりも小さいことが予測されています。
OECDのマティアス・コーマン事務総長は「新型コロナウイルスのパンデミックからの経済回復は続くことが期待される一方で、成長の勢いには依然として脆弱さもあります。特にエネルギー価格と食品価格の上昇などのインフレや、サプライチェーンの混乱が回復に対する脅威となっています。同地域の政府は、危機の影響を防ぎ、市民福祉の向上を継続させること、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の達成に向けての進展を加速させるために、マクロ経済政策や構造政策を効果的に実施する必要があります」と指摘しています。
ウクライナ戦争や先進国での金利上昇の世界的な影響によって、金融市場がさらに動揺する可能性があります。パンデミックが始まって以来、新興アジア地域の多くの国々では銀行の収益性と貸付が低下しています。労働市場の悪化を修復するには時間がかかります。脆弱な経済回復に対応するために、ほとんどの国では金融政策が非常に緩和的になっています。新興アジアの幾つかの国では財政刺激策を継続していますが、その規模はパンデミック開始時よりも緩やかになっています。
財政と金融の厳しい状況を考えると、新興アジア諸国の政策立案者はパンデミックからの回復を資金面で支えていく上で、さらに幅広い選択肢を検討する必要があります。シンジケートローンやスワップ協定などの多国間イニシアティブを利用すれば、公的債務のストックを管理することができます。さらに政策立案者は、ESGボンドなど、代替的なファイナンス手法を活用することもできます。ただ、本アウトルックでは、債券の市場を発展させるに債券の分類及び認証に関する健全な枠組みと、このような債券に特化した規制枠組みの確立、ソブリン債の供給の増加、投資家が市場に参加するインセンティブを改善することを推奨しています。保険リンク証券によって、極めて異常な事態に対する経済的補償を追加することも可能です。例えば、パンデミックに対するリスクプールという形の地域協力もパンデミック後の回復を支援することができます。
新興アジア地域の債券市場に必要なのは、制度的および法的な枠組みや、投資家保護、透明性、流動性、市場インフラです。このような必要性は、市場の発展が遅れている国において特に顕著です。新興国における金融リテラシーの向上は、複雑な金融商品についての投資家の理解が一層深まり、その市場への参加を促進することができます。そして、本アウトルックでは、金融セクターの安定性を高めることにより債券市場の発展を可能にする強力なマクロプルーデンスの枠組みを求めています。
『東南アジア、中国、インド・エコノミック・アウトルック2022』に関する詳しい情報は、次のウェブサイトをご覧ください: こちら
報道関係者の方は、OECD開発センターの田中兼介アジアデスク統括([email protected], +33 6 27 19 05 19)、同センター報道担当のBochra Kriout([email protected], +33 1 45 24 82 96)、またはOECD東京センター広報マネージャーの横川友美子([email protected], +81 3 55 32 00 21)までお問い合わせください。
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